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第二部の名曲

『空と君のあいだに』に並ぶ名曲として

ドラマの人気も相まってか、家なき子は劇場版作品が制作された後に、第二シーズンのドラマ作品まで続きます。今作で完結し、その後のすずがどうなるのかは視聴者の想像に委ねられる事となりましたが、それでも中学生になったばかりの少女が1人で、日本を流離うという時点で過酷すぎる。ただ今作については筆者なりにかなりトラウマを感じる作品でもある、なにせすずの味方だった存在が次々と劇中からフェードアウトしていき、最終的には彼女の生涯においてたった一人とも言える相棒、並びに恋い焦がれた人を失うという結末を迎えてしまうからだ。不遇にも程があるだろうと脚本家に文句の一つも言ってやりたいところだ。

『家なき子2』として放送され、やはりこちらも例外なく前作が放送された翌年95年において代表的な作品として人気を集めます。ただ内容が前作から一転してサスペンス調の事件性溢れるものとなっていて、これは本当に家なき子という話なのだろうかと何度思ったことか。しかもすずが何気に偽物の孫に成り代わって財産を奪おうとする辺り、前作よりもたち悪くなっていないかと、今ではそう思えてしまいます。

そのせいで彼女自身も命を狙われ、やがて母を失うきっかけにもなってしまった病を発症して命の危険に苛まれてしまう。そんな彼女を救おうとした相棒がいなくなり、更には彼女が好きだった少年も消息不明になってしまうという、そんな終わり方になるなど誰が予想できたことか。

しかしだ、その点を踏まえた上で今作の主題歌である『旅人のうた』という作品を分析してみると、やはり奥深い歌詞なのが見て取れるのです。

作品概要

中島みゆきさんの32枚目となるシングルCDで、ドラマの内容と照らしあわせて人気を博してミリオンセラーとなる。ただミリオンを記録したと言っても、年間ランキングで見れば中島みゆきさんの作品がその年のミリオンセラー作品の『最下位』で、一位はドリカムの『Love Love Love』がダブルミリオンという、前年の倍以上の作品がミリオンを記録しているのです。全くもってすごいとしか言い様がない。

そんな今作について考察すると、気になる点として作品が放送されていた当時のエンディングに注目したい。エンディングに登場するのは主要登場人物であるすず、リュウ、そして相手役となる晴海の三人しか出てこない。そのため、楽曲もこの三人に焦点をおいて語っているとしたら色々と物語の先を予測させる内容が散りばめられているのだ。

まず最初、『男には男のふるさとがあるという』と『女には女のふるさとがあるという』について見れば、すずにはすずの帰る場所が、晴海には晴海の帰る場所があることを意味している。そして次に続く『なにも持たないのは さすらう者ばかり どこへ帰るのかもわからない者ばかり』と綴っている。二人にはそれぞれ帰る場所はある、しかしそれが一体どこなのか分からずに彷徨っているというところも似ている点から、二人が似た者同士であり、惹かれていく理由にも繋がっていく。

結末を予期させる内容

続く愛に対しての思いを歌う部分には互いを意識するまでに気持ちが膨れ上がる様子が感じられますが、問題は次からの歌詞だ。

あの日々は消えても まだ夢は消えない

君よ歌ってくれ 僕に歌ってくれ

忘れない忘れないものもここにあるよと

あの愛は消えても まだ夢は消えない

君よ歌ってくれ 僕に歌ってくれ

忘れない忘れないものも ここにあるよと

この部分、冷静になって見ると後にすずが直面する悲しくも受け入れなくてはならない現実を映し出しているとは思えないだろうか。筆者はエンドクレジットを今になってみて、改めてそう感じた。既に歌詞の中ですずがリュウと晴海の両方を喪失する、という未来を予期しているのです。

中でも後半部分にある『あの愛は消えても まだ夢は消えない』では、リュウに対して・晴海に対しての愛が消えても彼女の夢は終わらないという未来に繋がると解釈できます。例え彼らを喪っても彼らから受けた愛は忘れない、そして忘れることのないものとして二人の愛を持って旅立っていこうとするすずのひたむきさが描かれているのだ。奥深すぎる、という以前にすずが不幸すぎる。

形として

そういう意味で見れば、リュウが残したのはすずへの忠誠心だけでなく実子となるトラという遺児にも繋がる。最期にはトラを連れてあてのない旅へと出かけるすずで物語は終幕となっているのだが、それもどうなんだろうか。しかも周囲の大人が全く引きとめようとしない辺り、全員残酷すぎるだろうとツッコみたくなる。

こんな良い歌でも

小学生の授業で旅人のうたをピックアップした先生がいた、そこで今作の素晴らしさを説いていたが、それでも筆者は何かモヤッとした。ただ当時はまだ幼く、歌詞を理解するにはまだ幼稚過ぎたせいで何故この歌が本当に凄いのかを理解できずにいた。今になって歌詞を分析・考察すると物語の先、終劇に繋がる内容を暗に意味しているところに胸が締め付けられる思いだ。

一言述べるとするなら、誰かすずを助けてやれよ、マジで。