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あの名作を彩る90年代を代表する楽曲

家なき子という作品の強烈さには当時の人は大分驚きを隠せなかっただろう、ただ現代では家なき子の世界観以上の少年犯罪が横行しているので、暗に未来ではこうなるだろうと既に脚本家などは予測していたのかもしれない。たまたまこうなったというには説得力を持たされている、それとも同作品を見ていた世代の子どもたちが同じようなことをしていたとも考えられるだけあって、笑うに笑えない。本当に当時のドラマは面白かったが、やり過ぎな表現があったことも含めて今とは違った混沌さが漂っている。

ドラマについてはこのくらいにして、中島みゆきさんの話題をしていかなくてはならない。家なき子という作品には、どうしても『中島みゆき』というキーワードが欠かせません。もしここでユーミンだったり、スピッツだったり、TKファミリーだったり、ミスチルだったりと、当時大ヒットを連発していた歌手が担当していたら世界観の瓦解が半端ない。壮絶な内容なのに歌だけポジティブかつ恋愛ソングだったりしたら、二番煎じどころか興ざめする危険性も出てきてしまいます。

そういう意味では中島みゆきさんというセレクトは非情の正しい決断だったといえる。とはいえ、オファー時に出された物語のテーマがあまりに抽象的だったのはきついものはあるが、それを経ても『空と君のあいだに』という名曲が誕生したのだから凄い話だ。

楽曲概要

家なき子、ここでは1stシーズンとしておく。今作の主題歌に起用されて中島みゆきさんが制作した、実に31枚目となるシングルCDが今作だ。94年には31枚というだけあって、ベテランという息の長い歌手だというのは彼女を知らない人でも十分理解できるでしょう。ドラマの人気も相まって、CD発売前から高い注目を集めた本楽曲も、やがてその年はもちろん、90年代という日本音楽業界の黄金期にて輝く代表作としてもてはやされます。

作品の特徴について語るとするなら、劇中で見せるすずの苛酷な状況を物語りながらも、挫けないといった印象を分析できる年齢になったころに筆者は改めてそう解釈した。しかし、実は作品の視点はすず本人ではなく、後から調べてわかったのがなんと彼女の相棒である『犬のリュウ』から見たすずに対しての思いだというのです。

リュウといえば作中にてすずの危機とあらば何処へでも参上する名犬として語られ、野良犬だった時に出会って魂の繋がりめいたものを彼女に感じてからは忠誠を誓い続けるのだった。その後どんな時もすずと苦楽を共にし、彼女が外部に助けを求める際には即座に行動するという動物離れした能力を発揮します。こういうところから犬好きになったという人もいるかもしれませんね。

ではそんなリュウの視点から描かれた楽曲を、すずという少女を見て作られたとするなら今まで不可解だった部分が一気に紐解けるようになる。実に興味深い。

犬の視点だからこそ

今作の詞は恋愛ソングではないのは当時からなんとなく理解はしていた、今見てもとても愛を歌っているような歌詞ではないのが誰が見ても分かるでしょう。何しろ、登場する一人称と三人称が『僕』と『君』、そして『空』という3つだ。明確に愛を表現するような言葉もなく、健気に支えていこうとする姿勢が感じられることもあって、リュウから見た世界が表現されているのを理解できるでしょう。この点について中島みゆきさん曰く、犬の気持ちになって考えてみたとのこと。そうして考えていくうちに、犬が見ているのは飼い主であるすずを『君』とし、彼女以外の誰かを示す人称が登場しないもの特徴的といえる。

人によってはラブソングとは言うが、リュウという視点で考えれば恋愛という意味ではなく『友愛』としてのラブソングとしてなら納得はできる。何しろ絶対的な忠誠を誓っているのだから、これ以上ないくらいにすずは誰よりもリュウに愛されているのが見て取れる。現代のアイドルが歌う、軽薄な恋愛歌を聞いていると正直気色悪さを感じてしまう。それと比べれば今作は、どれほど純粋に愛しているのかという程度が図れる。

懐かせるのに

こぼれ話として話しておきたいのが、当時は主演の安達祐実さんはまずリュウ役の犬といかに親密になれるかがある意味問題だったとのこと。劇中では忠実すぎるくらいの犬ですが、実際には飼い主は他にいます。そして訓練されているとはいっても、ご主人以外の人に対して絶対的な服従を犬がすることはない。そのため、安達祐実さんの服には好物を仕込んで匂いに釣られるようにするといったことをされていたという。

健気な愛犬として描かれている一方で、こうした苦労を耳にするとまた違った見方が出来ます。

年間チャートで5位

今作はドラマが大ヒットしたこともあって、94年の一年間で『141万枚』というミリオンセールスを記録します。十分すぎるくらい凄い記録ですが、この年最大のヒット曲はミスチルのinnocent worldで『181万枚』を達成している。その間に3作もあり、さらに年間ランキングの18位までミリオンを達成しているというから圧倒される。

今作は中島みゆきさんの最大とも言えるヒット作であり、意外にもミリオンセールスを記録したのは2作目となっている。